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ロジェさんのアトリエ、情熱のボレロ


新型コロナ感染拡大防止のため、リモートでの会議や飲み会が、最近では当たり前になっていますが、私が初めてリモートでのチャレンジを意識したのは、すでに3月のことでした。
フランス国立管弦楽団の感動のユーチューブ映像です。
50名ほどの楽団員が、それぞれのパートの楽器演奏を自宅で行い、リモートで合わせて、見事な演奏を完成させているのです。
冒頭に、一段落ずつ、カット割りでメッセージが送られます。
「皆様との再会を待ちながら、私たちはこの困難な時を分かち合っています。
皆様のためにできるのは、こうして離れながらも、演奏すること。
この音楽が、皆様の心に少しでも、灯と力を届けられましたなら・・・。」
そして、このメッセージに続いて演奏されたのは、モーリス・ラベルの「ボレロ」でした!!
その力強い演奏に、聞いている私たちの心の内にも、むくむくと勇気が沸き上がってくるのを感じ、おおいに励まされました。
見えざる敵に果敢に立ち向かう人類の士気を高めるのに、ボレロはぴったりですね!

実はちょうど1年前、猛暑のパリ、オペラ・ガルニエで観た、マッツ・エックの新作も、「ボレロ」でした。
すでに引退を表明していたマッツ・エックをオペラ座が説き伏せ、待望の新作披露となったのです。
「ボレロ」のダンス・パフォーマンスについては、私はずっとモーリス・ベジャールの振り付けをこよなく愛してきました。
なかでも、ジョルジュ・ドンと、シルヴィ・ギエムの公演は、圧倒的にすばらしく、他の誰のボレロももう見る必要はない、と封印してしまったほどでした。
しかし・・・マッツ・エックの作品となれば、それは別枠。
何があっても見なければと、私はパリへ飛んだのでした。
「ジゼル」を精神病院を舞台とした物語として、斬新なステージ、独特のムーヴメントで表現するなど、マッツ・エックの作品の衝撃は、長く私を捉えて放しませんでした。
今回の「ボレロ」も、なんと刺激的な舞台だったことでしょう!




ジャン・コクトーのデッサンを思わせる人間の横顔が、音の高まりに合わせて次から次と出現し、ステージを埋めていく・・・胸が高まり、瞬きするのも忘れました。
考えてみれば、ラベル、コクトー、ベジャール、マッツ・エックと、時代はゆるやかにつながって、20世紀の美の極みを紡ぎだす作品群となったのですよね。

マッツ・エックの「ボレロ」の興奮さめやらぬまま、翌日私が向かったのは、世界的に有名なショコラティエ、パトリック・ロジェのアトリエでした。
ロジェは、私の愛するチョコレート作りの天才であり、彫刻家としても抜きんでた才能を発揮するアーティストです。
最初のアトリエを訪ねたのは、10年以上も前のことですが、パリの外れの新しいアトリエに、今回足を踏み入れることができたのは、本当に幸運でした。
半年時期がずれていたら、コロナ禍の影響で、2〜3年計画は頓挫してしまったことでしょう。
広大な緑の敷地の中に、木々に守られるように、巨大な彫刻が飾られています。
いや、自然という神の創造物と、ロジェという人間の創作物が、共に生きているといったほうが正しい印象かもしれません。
建物の横には、ロジェのチョコレートを運ぶ、かわいらしい車。
(黒にペパーミントグリーンは、ロジェのシンボル・カラーです。)




近未来的な建物のなかに入ると、真っ先に目に飛び込んできたのは、吹き抜けになった大きな空間にそびえる、夥しい彫刻の数々でした。
ロジェさんに聞いて、驚きました!
なんとその作品は、「ボレロ」だったのです!!!
ロジェさんもまた、ベジャールの「ボレロ」に魅せられ、そのシーンを彼ならではの彫刻作品として、まさに作りあげている最中でした。
私は言葉を失いました。




頭のなかに、強烈に、情熱的に、あの「ボレロ」の音色が響き渡るのを感じました。
主役の大作の周囲で、39体のダンサーたちが、踊っていました。
そしてその舞台を取り囲むように配置されたチョコレート工房で、ロジェの絶品チョコレートが、次々に姿を現しているのでした。
それはまさしく、傑作の生れ出る芸術家の棲み処・・・。





この夏、私は再びジョルジュ・ドンとシルヴィ・ギエムのDVDを取り出して、「ボレロ」に感じ入っています。
人類に襲いかかった未曾有の難局を、たくましく乗り越える勇気を、奮い立たせるために。


2020年7月30日  

楠田 枝里子