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マティアス


添付写真付きのe−メールが、次々と届く。
北海道は、ニセコ・スキー場から、東京日比谷公園から、鹿児島の桜島から・・・。
文字がウキウキと踊っている、このメールの発信者は、マティアス・シュミーゲルト。
「ピナ・バウシュ中毒」の愛読者なら、すぐ、
「ああ、あのマティアス!」
と、にんまりされることだろう。

1993年、ミュンヘンでの「カフェ・ミュラー」の公演のあと、ピナたちのプライベート・パーティに誘ってくれた、マティアス。
そこから、私のピナ・バウシュの扉は劇的に開かれることになった。

どんな困難な事態にも、常にジョークで切り返して、先に進む勇気を与えてくれた、マティアス。

ヴッパータールの自宅に何度も招いて、ピナやマリオンやルッツらとの食事会を楽しませてくれた、飛び切りの料理人、シェフ・マティアス。

ベルリン、ブランデンブルグ門の大晦日の花火を、ジョルジュのアパートで大騒ぎをしながら一緒に仰ぎ見た、愉快なマティアス。

浅草で、どじょう鍋をゲラゲラ笑いながらたいらげた、チャレンジャー、マティアス。

ピナ・バウシュを追って旅を続けた、この17年、忘れえぬ思い出のほとんどを、マティアスと一緒だった。

底抜けに明るく振る舞う一方で、いつも細かな心配りで、皆をまとめていた。

私にとっても、かけがえのない友、マティアス!

パリにて
日本公演のレセプションにて
ヴッパータール、
シェフ・マティアスの食事会


全員集合2004



去年の夏まで、タンツテアーター・ヴッパータールのジェネラル・マネージャーを務めていたが、60歳を迎えたのを機に、日常のルーティンワークからは一切離れ(カンパニーの理事としては残っているが)、皆に惜しまれながら、自由の身となった。
その後は、世界を飛び遊びまわっている。
彼は、友だちを作る天才だものね!



全員集合2003



「まだまだ、みんなは、あなたを必要としている。
こんなに元気でバリバリ仕事をこなしてるっていうのに、どうして引退なんてするの?」
という周囲の問いに、マティアスはこう答えたものだ。
「もっともっとと仕事をして、体が動かなくなってから引退して、どうするの?
元気だからこそ引退して、やりたいことをするんじゃないか。」
そう、マティアスは、本当に人生の楽しみ方を知っているのである。
だから私も、最後にはもう彼を引き止めることができなくなっていた。

去年の7月、マティアス最後のベネツィア・ツアーに駆けつけた私は、運河沿いの小さなレストランで、2人で乾杯をした。
運悪く、マティアスは風邪を引き、私はのどを痛めていて、
「病人の晩餐だね」
なんて、笑いながら。

その後、驚くことに、日本大好きの彼は、ミュンヘンの日本語教室に通い始め、少し日本語が操れるようになった。
今年のお正月には、こんなおかしなニュー・イヤー・メールが届いた。
「あけまして おめでと うごやいます」
もう、びっくり、大笑い。
「たのしい日本語」というテキストを抱え、ひらがなは勿論のこと、漢字だって、「日本」「山」が読める。
そうして、準備万端整えて、この2月に来日し、日本一周の旅を続けているというわけだ。
スケジュールなど一切立てぬ、気ままなひとり旅である。
「日本の朝は、納豆ご飯にかぎるね!」
なあんて言いながら。
存分に日本を堪能したあと、今週の半ばに、東京に戻ってくる(はずだ)。
そう、ピナ・バウシュたちが、来日するからである。
2週間の公演期間中、マティアスはまたメンバーと共に過ごす。
今回の演目は、あの思い出の「カフェ・ミュラー」と「春の祭典」。
ピナが自ら舞台に立つというのだから、一緒にいないわけにはいかないじゃない!
勿論、私もね!!

劇場で姿を見つけたら、みなさん、どうか、
「おかえり、マティアス!」
と声をかけてあげてくださいね。

ピナの公演が終わったあとも、マティアスは日本をもう少し楽しんでいくとか。
でもね、
2〜3年この調子で遊びまくったら、やがてそれにも飽きて、またマティアスはピナや私たちのところに戻ってくると思うんだよなあ、きっと。
待ってるよっ、マティアス!
ベネチアにて
ピンクの羽根のコサージュは、
マティアスとマリオンからのプレゼント
和室が大好き
書の前で、得意げ
マティアス最後の日本ツアーの最終日



2006年3月28日  
楠田 枝里子