** Eriko Kusuta's World ** 楠田枝里子公式ホームページ **
■マリア・ライヘ基金について



■最後に

■レポート
Mar.2014
ナスカ・パルパを
巡る国際講演会


■レポート
July2010
パルパ博物館から


■論文
「古代パラカス人
の移動に関する
新たな考察」

New Speculation Regarding the Migration of the People of Ancient Paracas

■レポート
Oct.2006
新発見、ナスカの
地上絵


■論文
「ナスカ・パルパ
の地上絵、ひとつ
の解釈」


One Interpretation
of the Nasca and
Palpa Geoglyphs


■レポート
Jan.2006
パルパ博物館の子供たち


■レポート
May 2005
マリア・ライヘ博物館


■レポート
Oct.2004
パルパ博物館


■レポート
Sep.2004


■レポート
Apr.2004
パルパの遺跡


■レポート
Jan.2004




Copyrights

■メッセージ
ナスカへ


■メッセージ
夢のような日々


■メッセージ
ペルーの子供たち





マリア・ライヘ博物館


パルパ博物館オープンのあと、そのニュースを、誰よりも早くマリアさんに届けたいと、私はマリア・ライヘ博物館へ急ぎました。
マリア・ライヘ博物館は、パルパからナスカに向かうパンアメリカンハイウェイ沿いにあります。
今から64年前、まさにこの場所から、マリアさんは研究をスタートさせたのでした。


マリア・ライヘ博物館


博物館の入り口にとめられた車を見て、びっくり。
それは私が、16年前、富士重工さんのご協力を得て、マリアさんのフィールドワークのために寄付をした車だったのです。
砂漠のなかの過酷な作業を続けて、16年ものあいだ、大事に使ってくれていたのでした。
貧しい国の砂漠のなかでは、調子が悪くなっても、部品を調達するのも大変だったでしょう。
ゲリラやテロリストの活動が活発だったころは、狙われないよう、わざと汚い色に車体を塗っていましたが、今はこんなにきれいに整備され、なお活躍しています。
驚きと感謝の思いで、その前に呆然と立っていると、事情を知っている人が、
「懐かしいでしょう。
今も頑張ってくれてますよ。
どうぞ、どうぞ、運転席に座ってみてください」
とドアを開けてくれたのですが、私は入ることができませんでした。
マリアさんや、彼女に寄り添い活動をともにした妹のレナーテさんと、この車で砂漠を駆けた、たくさんの思い出がよみがえり、胸がつぶれそうだったから。


16年もの間、マリアさんの仕事を支えた、スバル。


博物館は、最初は小さな小屋ひとつからスタートし、今はマリアさんの暮らしていたスペースを含む展示室3つと、マリアさんとレナーテさんの眠るお墓、その周囲を取り囲む美しい庭で成っています。
運営しているアソシエーション・マリア・ライヘの人たちが、待っていてくれました。
懐かしい顔・・・代表のボッカネグラさんは、10年以上も前からの知り合いです。
現在は彼がマリアさんの活動を引き継ぎ、地上絵のパトロールや、侵入禁止区域のチェックをしています。


マリアさんの小屋

アソシエーション・マリア・ライヘのメンバーと。
一番右が、代表のボッカネグラさん。


マリアさんのお墓参りをするのは、これが初めてでした。
マリアさんが亡くなられたとき、私は自分の無力に落ち込んでしまい、自分が何か、どんな小さなことでも彼女のために成し遂げて、胸を張ってお会いできるまで、この地には足を踏み入れることはできない、と思ったのです。
長い時間がかかりましたが、ようやく、パルパ博物館のプロジェクトが実を結び、私もマリアさんとレナーテさんの前に立つことができたのでした。


マリアさんとレナーテさんが共に眠るお墓の前で。

千代紙の箱に入った和菓子をお土産に。


マリアさん、レナーテさんと、長い話をしました。
実は、彼女たちが、私に大きな力を貸してくれて、この地に再び呼んでくれたのだと、知りました。
晩年は特に苦労の連続だった、ふたりの女性。
今はこうして、思い出の地で、ブーゲンビリアの咲き誇る美しい庭や、アンデスの山々を眺めながら、静かに日々を過ごしていることを知り、あふれる涙をとめることができませんでした。


マリアさんとレナーテさんのお墓を、ぐるりと、
美しいブーゲンビリアの花が飾っています。


どうか皆さん、マリア・ライヘ博物館を訪ねてください。
ナスカを旅する日本人の多くが、リマからの飛行機でただ空を飛んで帰っていくようですが、それではもったいない、どうか、その大地を踏みしめてください。
生涯をかけたマリアさんの仕事を、見てください。
できれば、どれだけでもいいですから、アソシエーションのために寄付をしてください。
日本ではほんのお小遣いくらいの金額でも、現地では大きな力になります。
皆さんからの寄付金や入場料は、ナスカの地上絵の保護活動や、博物館の維持、そして、この地に今も生き続けるマリアさんの思いを引き継いでいくために使われます。

博物館では、2頭のリャマも、待っていてくれますよ。


マリア・ライヘ博物館の庭の、リャマ。


2005年5月