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ダムタイプの宇宙へ
ここには、全く違う空気が流れている。
日常から切り離された、静謐な美しさに満ちている。
昨年ヴェネチア・ビエンナーレで発表された、ダムタイプの新作を見るために、京橋のアーティゾン美術館に足を運びました。 (会期は、5月14日まで。)
ダムタイプは、ヴィジュアルアート、映像、コンピュータープログラム、音楽、ダンス、デザインなど、さまざまな分野のクリエーターによって構成されています。
その中心となるアーティストの高谷史郎さんは、20年来の私の友人。
1999年、ピナ・バウシュがヨーロッパ演劇賞を受賞したとき、イタリア、シチリア島で盛大にお祝いのセレモニーが行われたのですが、そこに駆けつけた日本人3人が、シローさんと、浅田彰さんと、私、だったのです。
(共に過ごした甘美な1週間については、拙著「ピナ・バウシュ中毒」の第5章「シチリアの風」でお読みくださいね。)
天井には光の海図。
コンピューターが打ち出す赤や白の文字列が、縦横無尽に周囲に流れていく。
(下手なシロウト写真で、申し訳ない。
このダムタイプの宇宙を、一人でも多くの方に、会場で体感していただければと思う。)
壁に沿って16カ所に、ソノシートのような装置が置かれていて、耳を澄ませば、世界各地から音が届けられる。
たとえば、メキシコシティの仕掛けからは、物売りの声、自転車(多分)がチリンチリンと鳴らす音。
人々が行き交うニューヨークの雑踏も、イスタンブールのコーランの響きも、私たちを遠い異国の地へと運んでくれる。
これらの音は、坂本龍一のディレクションによるものだ。
16の都市の方向、位置関係には、深い意味があるのだが、ここでは明かさないので、皆さんが現場で発見してほしい。
シローさんの作品に身を投げ出すと、ひたすらその美しさに酔っているうちに、時が過ぎていく。
そこでは、全ての要素が電子レベルに分解されているみたいだ。
自分の体も、空間を構成している、ちっぽけな点として連続しているという感触があり、それが飛びっきり心地よい。
しかし、茫然とその場に立ち尽くしていると、ある瞬間にふと、「ここは何処だ」「どういう意味」「私は何だろう」と、果てしなく疑問が湧き起こってくる。
答えが見つかるか、見つからないか、わからない。
問うことで、静寂の世界に、私と言う電子が物理運動を始める気がする。
シローさんのインスタレーションでは、人はそうやって、自分自身との対話を余儀なくされるのかもしれない。
あくまでも、これは私だけの感覚であって、他の人の反応はまた別だろう。
シローさんが潜ませた真意とも、全く違っていて当然だ。
美術館がクローズしたあと、シローさん、奥様でマネージメントを担当する桜子さんと、近所のイタリア料理店へ移動しました。
話はおおいに盛り上がり、バカバカしい思い出話に大笑いしたり、人類と世界の未来について憂えたり・・・ああ、面白かった!
そうそう、この写真は、シローさん、桜子さんと、会場で。
私は、クールな作品の雰囲気に合わせて、真面目な顔をしているのに、ふたりとも笑ってるんだもの、やだなあ、もう!
2023年5月1日
楠田 枝里子