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世界のどこかで
ヴッパータールで、タオルミーナで、ブダペストで・・・世界のどこかで、毎年ピナ・バウシュのカンパニーのみんなに会うことは、私の大きな喜びのひとつになっています。
もう30年近くも。
今年は、パリ。
「アグア」の公演を見るために、飛んだのです。
パフォーマンスは夜ですが、私はもうお昼には、劇場の角にある、いつものカフェ・ミストラルに向かい、仲良しのダフニスとランチを楽しんでいましたよ。
誰にも愛されるダフニスの回りには、常に笑顔が溢れています。
ランチをご馳走してもらいましたよ!
そのあと、テーブルを移動して、フェルナンドとお茶。
フェルナンドも、ピナ作品には欠かせない、私のお気に入りのダンサーです。
フェルナンドのお母さんがヴェネズエラからいらしていて、久々の再会。
フェルナンド、お母さんと、イタリアのダンス関係者ふたり。
楽屋へと急ぐエレナ・ピコンが、通りすがりに私を見つけて、カフェに寄ってくれました。
しばし立ち話。
日本をテーマにした作品のなかで、エレナが踊った「さとうきび畑」はあまりに美しく、涙したことを懐かしく思い出します。
そばで、ちょっと難しい顔をして書き物をしていたルッツが、ようやく仕事を終えて、声をかけてくれました。
ルッツは芸術監督を務めているので、とても忙しそうです。
ルッツと私は、同い年なの!
もう長い付き合いです。
時間になって、私たちはテアトロ・ド・ラ・ヴィル(この劇場にも、思い出がいっぱい)に入り、ピナ作品の美しさに酔いしれました。
何度見ても、すばらしい!!
今日も、スタンディング・オーベーション。
舞台がはねたあと、フランコがアレンジしてくれた近くのレストランで、ご飯を食べることになっていました。
劇場の前で。
右から、ゼネラル・マネージャーだったマティアス、私、ルッツ、
ポルトガルから駆けつけてくれたジョルジュ。
ベルリンのジョルジュの高層マンションから、
みんなで大晦日の花火に歓声をあげたのは、
もう10年以上も前のことでしょうか。
フランコは、優しい気配りのある、魅力的なダンサーです。
日本の大相撲が大好きなので、私がお土産に力士のイラストの入ったバスタオルを持っていくと、とても喜んでくれました。
フランコと、お土産のタオル。
すると、思いがけずフランコからは、カラフルなボックスをプレゼントしてもらったの。
箱を開けると、黒と白の水玉のペーパーバッグが。
さらにそれを開けると、ポップなイラスト入りの、小さい袋が5つ。
(マトリョーシカのように工夫を凝らしたパッケージは、勿論フランコの手によるものです。)
そして、そのなかから最後に出てきたのは・・・ピンクとパープルのブーツに、スケートボード、ト音記号に、色違いのフクロウ・・・ドイツ製の消しゴム!
フランコは、私が消しゴム・コレクターなのを忘れずにいて、いつも珍しい消しゴムがないかと、探していてくれたんですね。
私たちは夜中まで、美味しく飲んで、食べて、にぎやかにおしゃべりに打ち興じました。
名残惜しいけれど、別れの時はやってきます。
それじゃ、また会いましょう、と互いに声をかけあいました。
「また、世界のどこかで!」
2016年8月1日
楠田 枝里子