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ヴッパータール、ヴッパータール


私のヨーロッパ旅行はいつも、ヴッパータール滞在日程から計画が始まります。
ヴッパータールは、ドイツ中西部にあり、ピナ・バウシュが本拠地として活動していた町です。
毎年5月に、ピナはここのオペラハウスで新作発表を行っていて、私は必ずプレミエに参加していたのです。
悲しいことに、ピナは5年前に亡くなりましたが、変わらず私は5月にヴッパータールに赴きます。
今もカンパニーはピナ作品のパフォーマンスを続けており、激励の意味も込めて、みんなに会いに行くのです。
そう、勿論、今年も!

まずは、この3月、ピナのカンパニーがさいたま芸術劇場で「コンタクトホーフ」という公演を行ったさいの、レセプション会場の写真をご覧ください。


バルバラと。
ドミニークと。
芸術監督を務めているルッツと、フランコ。
ダフニス、フェルナンド、アンドレイらと。
ルースとホルヘ一家。
一番下のちびちゃんは、
恥ずかしがって隠れてしまいました。
ツスネルダ、アズサ、
クレメンティーヌらも。
山海塾の天児さんも参加していましたよ。


このとき、みんなと、
「また5月に会いましょう!」
と声を掛けあったのでした。

そして、5月。
ヴッパータールに身を置いていると、私は故郷に帰ったような気分になります。
まずはオペラハウスで、「ヴィクトール」という作品を見ました。
1986年初演の、ローマとのコ・プロダクションです。
私はもう何度も繰り返し見ているのですが、またもやおおいに笑い、涙してしまいました。
このうえなく、美しく、ドラマチック、感動的で、悲しい、すばらしい作品です。
パフォーマンスの途中、ダンサーが客席に入って、観客にジャムを塗ったパンを渡したり、話をして回るというシーンがあるのですが、ダンサーのミヒャエルが私の姿を見つけると、「絵はがきは如何ですか?」と声を掛けてくれました。
思わず私が「おいくらですか?」と聞くと、ミヒャエルはにっこり笑って、「けっこうですよ。さしあげましょう」と、2枚の絵はがきを手渡してくれたの。
うふふ、若き日のピナの写真が印刷された絵はがきでした!

衣装担当のマリオンや、楽屋ではドミニーク、フランコ、ザスポルテス、ナザレット、ルース、ジュリーなどなど、たくさんのダンサーたちにも会ったんだけど、あまりにも目まぐるしく再会を喜びあっていたので、写真を撮る暇がなかったわ、ごめんなさい。

ピナの息子のサロモンが、彼が代表を務めているアーカイブを案内してくれました。
ピナ作品に関わる全ての書物、DVD、パンフレット、記念品などが整然と管理され、数々のイベントを主催しています。
サロモンは物静かで、とても優しい青年です。
「ヴィクトール」終演後、ディナーにも招待してくれました。
趣味の良い、心地よいイタリアン・レストランで、深夜2時までおしゃべりしましたよ。

私がヴッパータールに来ているというので、ステージ・アーティストのペーター・パプストがベルリンから駆けつけ、ヴッパータール郊外で開催されている彼のエキシビションを案内してくれました。
劇場で用いる舞台美術の装置を製作する工場で、ピナ作品の巨大な写真の展覧会を行っていたのです。
工場は、ちょうどオペラ「トスカ」の舞台を作っているところでした。
用材や機械類を背景に、ピナの研ぎ澄まされたパフォーマンスのパネルの数々が浮かび上がって、それはそれは面白い展覧会でした。
会場でばったり、ドミニークと会って、しばし歓談。


ドミニーク(左)と、ペーター(右)

ドミニークの写真の前で、ドミニークと。



ヴッパータールには、シネマックスという大きな映画館があって、ある日私はそこで1日中、映画三昧。
ピナ作品の特別上映があったんです。
その日は、2000年代の作品の上映で、「ネフェス」「テンチ」「ラフ・カット」「バンブー・ブルース」の4本を見たの。
はあ〜〜、終わったのは、深夜1時!
でも、何時間目にしていても、ピナ作品には、心躍ります。

またある日、仲良しのダフニスがランチに誘ってくれました。
(夜は公演があるので、お昼に。)
雰囲気のあるカフェ・クレーメのビュッフェで、美味しく楽しく過ごしました。
ダフニスは、皆に慕われる、本当に気持ちのいい青年です。


ダフニス。
ごちそうさまでした!


ダフニスから、すてきな話を3つ聞きましたよ!
まず、ひとつ。
ヴッパータールからケルン、パリへと向かう列車の中で、ピナとダフニスは向かい合わせに座っていたんですって。
進行方向に背を向けていたピナに、ダフニスが気を使って、
「席をかわりましょうか?」
と聞くと、ピナは、
「いいえ、あなたは未来に向かっていって。
私は過去を見つめているから。」
ふたつめは、
夜遅くワインを勧められて、ダフニスが、
「これ1杯飲んじゃったら、眠れなくなるので」
と断ったら、
「じゃ、2杯飲めば」
とピナ。
3つめのエピソードは、こうです。
あまりに忙しい日々が続いて、ダフニスは腱鞘炎になって、右手が動かなくなったそうです。
「だめです。
もうこれ以上書けません」
と訴えると、ピナはこう返したそうです。
「じゃ、左手で書いたら、どうかしら?」
けして弱音を吐かない、「できない」と諦めることをしなかったピナらしいエピソードでしょう?!

「公演まで、まだもう少し時間があるから」
とダフニスはぎりぎりまで私をもてなしてくれました。
ルイーゼン・シュトラーセのフリー・マーケット(年に一度。ちょうどこの日だったの!)に連れていってもらったのです。
古い時代の味のある建造物が立ち並ぶ通りの両側に、ぎっしりと出店が続いて・・・珍しい愉快な体験でした!
さすが、ダフニスは人気者で、歩くたびに、あちこちから声がかかっていましたよ。

他にも、他にも、大盛り上がりのイベントの連続だった、私のヴッパータール滞在。
旬のシュパーゲル(白いアスパラガス)・パーティの模様も、残念、長くなってしまったので、割愛します。
なお、このページのタイトル「ヴッパータール、ヴッパータール」の意味は、拙著「ピナ・バウシュ中毒」第5章「シチリアの風」を参照なさってくださいませ。

次回は、パリでの美食の日々をお伝えしますね〜。


2014年9月1日  

楠田 枝里子