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ダイアン、フロイト、そしてピナ
衝撃的な夏の始まりでした。
まずは、ドイツ、フォルクヴァング・ムゼウムでの、ダイアン・アーバスの大回顧展。
これまで小さな個展や写真集で抱いていたダイアンのイメージが、いっぺんに吹っ飛びました。
特殊で奇妙な写真を撮ったことで知られる女流写真家ダイアンですが、年代を追って詳細に作品を見ていくと、伝えられている好奇の眼差しとはまた異なる、彼女の身を切るような表現が、激しく迫ってきます。
何が、自然で、何を奇妙と判断できるだろうか。
人間というのは、どんな立場の誰であれ、人間であろうと意識した瞬間、奇妙で不自然な存在となるのです。
イタリア、ベネチアに移って、ビエンナーレの真っ最中、ルシアン・フロイトの展覧会に足を運びました。
まさにその場に息づいていると感じさせる、生々しい人間の肖像・・・。
どの顔も、深い悲しみに沈んでいて、人間であることの、行き場のない苦しみが、私を釘付けにしました。
そして、そのベネチア、新しく生まれ変わったフェニーチェ劇場で、ピナ・バウシュのパフォーマンスを見ました。
体の底から湧き上がってくる哀しみに、最後は、涙でもう舞台が見えなくなりました。
旅の途中から、私は喉を痛めて、激しい咳に襲われていましたが、ひょっとすると、身の内の奥底から、咳と共に、何かを吐き出そうとしていたのかもしれません。
2005年7月26日
楠田 枝里子
追記
あまりのショックの大きさに、私自身は1枚の写真も撮れなかったことを、お許しください。
ピナやダンサーたちとの宴のスナップは、あとから皆が送ってくれると思いますので、また改めて、「ピナ・バウシュ中毒」のページで、ご報告しますね。
以下は、久しぶりにフェニーチェでお会いした、シュテッカーさんから送っていただいたものです。
ベネチア、フェニーチェ劇場。
フェニーチェのロイヤル・ボックスにて。
シュテッカーさんご夫妻と。
シュテッカーさんは、以前、在日ドイツ大使館の公使を勤められ、現在は、ミラノの総領事。
ご夫婦そろって文化や芸術に造詣が深く、心から尊敬、信頼できる、すばらしい方々です。
実は、「マリア・ライヘ基金」のために、ドイツ考古学研究所のラインデルさんとの間を取り持ってくださったのも、シュテッカーさんでした。
(シュテッカーさんご夫妻のファンは私だけではなく、また日本に帰ってきてくださることを、たくさんの日本人が心待ちにしているんですよ。)
今回も、ピナのプレミエでの再会を、お約束していたのでした。
本当に、嬉しいひとときでした!