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ベッリーニの夏


毎年6月、1週間ほどを、私はヴェネツィアで過ごしています。
下旬になるともう暑いけれど、上旬は爽やかで実に心地よい。




そして、この時期は、「ベッリーニ」のシーズンなのです!
ジョヴァンニ・ベッリーニは、15世紀の、イタリアルネッサンス期、ヴェネツィア派の巨匠。
その名を冠したベッリーニは、ヴェネツィアのハリーズ・バーで生まれたカクテルなんですね。
ジュゼッペ・チプリアーニが考案したもので、スプマンテ(イタリアのスパークリングワイン)と、桃のジュース、グレナデンシロップを合わせたもの。
仄かに大人のピンクがかった、エレガントな一杯です。
実は、ジュゼッペはシロップではなく、少量の砂糖を加えていたのですが、後にグレナデンシロップが一般的になりました。
また、世界に広まるにつれ、スプマンテの代わりにシャンパンを使うことも多くなったのですね。
初夏の爽やかさと、季節のフルーツのフレッシュな甘味が見事なハーモニーをなしていて、私の大好きなカクテルのひとつです。
保存されたピーチネクターを使えば、1年中楽しめるのですが、いやいや、私は桃の旬の時期にしか、飲みたいとは思いません。
新鮮な桃の果実を目の前で絞って、スプマンテと合わせる!
この美味しさを知ってしまったら、もう他の季節に濃縮ジュースを使ったベッリーニなど、いただく気にはならないのです。
そこで!!
6月のヴェネツィアでは、私は毎日ベッリーニを楽しみます。
食前酒としては勿論、ちょっと休憩とか、のどが渇いたな、とか事あるごとにベッリーニを注文してしまうの。

昨年6月、ヴェネツィア初日に、私は、クエリーニ・スタンパーリアというパラッツォで開催されていた「ベッリーニとマンテーニャ展」に向かいました。
(マンテーニャは、ベッリーニの弟子です。)




三十数年ぶりに感動の再会を果たした、マサコちゃんと一緒です。
マサコちゃんは、私の優秀なアシスタントでした。
細やかな心遣いがあり、私が忙しくて食事する時間さえ満足に取れなかった時期には、移動の車のなかでも手早くお腹に入れられるよう、お弁当を作ってきてくれたりしたのですよ。
相次ぐ海外ロケにも同行して、頑張って仕事をこなしていました。
大学卒業したばかりでしたから、慣れない外国で戸惑うことも、苦労することも多かったでしょう。
努力家の彼女はやがて、
「私の英語力では、全く役に立たない。
勉強してきます。」
と一念発起して、アメリカに留学したのでした。
その後、長い年月が過ぎ、まさかヴェネツィアで再会するとは、夢にも思っていませんでしたね。
ひょんなことから、マサコちゃんがヴェネツィア大学の教授を務めているとの情報を得、伝手をたどって、急いで連絡を取ったのでした。
マサコちゃんも、私が毎年ヴェネツィアに滞在していると知り、とても驚いていました。
ひょっとすると、町なかですれちがったこともあったかもしれないけれど、気付かなかったのでしょうか・・・?
ともあれ、奇跡のように美しい町で、すばらしい奇跡が起こったのですね!!!
こんなステキな経験ができるのなら、トシをとるのも悪くないものだなあ、なんて、私はしみじみと感じたのでした。




1年ぶりの町歩きをマサコちゃんと楽しみ、ベッリーニの展覧会を堪能しました。
食事の予約をしていたレストランのバーに落ち着き、マサコちゃんと最初のベッリーニで乾杯しました。
格別のベッリーニの味でした。
30年のブランクなど、たちまち飛び越えて、つもる話に花が咲きました。
マサコちゃんはアメリカで勉強したあと、ロンドンの会社で仕事をしていたそうです。
ある年、バカンスで訪れたヴェネツィアで、電撃的な恋に落ち、結婚して、イタリアに移り住んだということでした。
そのうち、大学で教鞭を取ることに・・・。
まあ、なんてドラマチックな人生でしょう!!
夜遅くまで、飛びっきりのヴェネツィア料理に舌鼓を打ちながら、大興奮で話し続けました。
(私のヴェネツィアの美味しいレストラン・リストは、なかなかのものですよ。
ガイドブックが書けるくらい・・・笑。)
さらに翌日には、マサコちゃんとムラーノ島まで出かけ、ヴェネツィアン・グラスに感嘆して回りました。


気に入りのカルロ・モレッティのお店で。
ディナーのレストランのテーブルで。


さて、 マサコちゃんと「また来年、会いましょう!」と約束をして別れたのですが・・・。
なんて残念なことでしょう。
愛猫マフィンの体調が悪く、今年の6月は長期に渡欧することが難しくなってしまいました。
パリでどうしても外せない用事をいくつか済ませて、超特急で帰ってくる予定です。
いつものように、ヴェネツィアでのんびりする余裕がないのです(泣)。
仕方がありません、1年先にお楽しみを取っておくことにしましょう。
でも・・・今年のベッリーニはどうしましょうか?
パリのレストランで友人と、あるいは再びいつものホテルのバーで、美しい季節の到来を祝うことにしましょう!



おまけの情報(1)
ベッリーニ発祥のハリーズ・バーは、あまりにも有名になりすぎて、いつも観光客でいっぱいなので、私はもう行きません。
2Fのレストランを予約して、大きな窓いっぱいに広がるグランドカナールを眺めながら食事をするのは、なかなかステキですよ。

おまけの情報(2)
ベッリーニは、勿論ヴェネツィアが本場ですが、そこまで行く暇がないという方、ミラノのフォーシーズンズホテルのバーで味わうベッリーニも、絶品ですよ。
ミラノでは、私はいつもここで、ベッリーニをいただきます。
お試しあれ!

おまけの情報(3)
ヴェネツィアのハリーズ・バーで生まれたベッリーニがあまりにも評判になったため、触発されたフィレンツェのハリーズ・バーが、「ティッツィアーノ」というカクテルを発表しました。
桃のジュースを、グレープフルーツジュースに置き換えたもので、これもとても美味しい。
季節を問わず、楽しむことができます。
ティッツイアーノは・・・ベッリーニの弟子のひとりなんですよ。
オシャレな話でしょう!


2019年6月8日  

楠田 枝里子