** Eriko Kusuta's World ** 楠田枝里子公式ホームページ **
■ はじめに

■ Airplane
■ Animal
■ Ball Game
■ Barbell
■ Bomb
■ Book
■ Box Lunch
■ Bread, Roll
■ Button
■ Cake
■ Camera
■ Candy
■ Canned Beverage
■ Car
■ Caramel
■ Card
■ Cassette Tape
■ Cellulose Tape
■ Chewing Gum
■ Chinese Noodles
■ Chocolate
■ Cigarette
■ Clapperboard
■ Clock
■ Clothespin
■ Coffee and Cream
■ Comb
■ Cookie
■ Crayon
■ Curry and Rice
■ Cutlet
■ Detergent
■ Dinosaur
■ Doll House
■ Donburi
■ Fire Extinguisher
■ Fish
■ Flower
■ Fruit
■ Hamburger
■ House
■ Human Body
■ Ice Cream
■ Ice Lolly
■ Kamaboko
■ Kitchenware
■ Light Bulb
■ Medical Supplies
■ Milk
■ Money
■ Monster
■ Mosquito Coil
■ Musical Note
■ National Flag
■ Noodles
■ Notebook
■ Nuts
■ Oden
■ Peko-chan
■ Pencil
■ Picnic Lunch
■ Prism
■ Raisins and Butter
■ Record
■ Ruler
■ Sauce
■ Shirt
■ Shoes
■ Soft Ice Cream
■ Space Shuttle
■ Stamp
■ Sushi
■ Taiyaki
■ Tap
■ Tea Bag
■ Telephone
■ Testimonial
■ Tissues
■ Tofu
■ Tool
■ Toy
■ Unaju
■ Vacuum Cleaner
■ Vegetables
■ Video Game
■ Wrap

世界の消しゴム
■ America(USA)
■ Australia
■ Chile
■ China
■ Colombia
■ Denmark
■ England(U.K.)
■ France
■ Germany
■ Indonesia
■ Islael
■ Italy
■ Mexico
■ New Zealand
■ Peru
■ Poland
■ Soviet Union
■ Spain
■ Taiwan



Copyrights



シートベルト着用サインが消えたと思ったら、スチュワーデスが何やらカラフルな包みをかかえ、こぼれんばかりの笑顔で、後方の座席に向かっていった。
私は身を乗り出し、視線を送る。

はたして、そこには、母親の胸元で目を真ん丸にしている幼児と、隣のシートに埋もれるように腰かけ、足をばたつかせている小学生の顔があった。
まもなく、子供らのはしゃぐ声が響いてきた。スチュワーデスが手渡したのは、絵本? パズル? ぬいぐるみ? それとも‥‥!

意を決し、私は、通路を戻っていくスチュワーデスに声をかける。
「あのう‥‥お子さんへのプレゼント用の、飛行機の形をした消しゴムがあったら、私にもいただけませんでしょうか?」
周囲の乗客が、怪訝そうな眼差しを投げかける。

スチュワーデスが、
「あ、はい、ただいまお持ちいたします」
と、にこやかに対応してくれると、ほっとするのだが、ほとんどの場合、
「あいにく、消しゴムはおいてございません。ミニーちゃんの風船ではいかがでしょうか。それか、飛行機でしたら、プロペラの回るビニールのおもちゃがございますが‥‥」
なんて言われるものだから、恥ずかしい。
あたりから、くすくす笑いが聞こえてくる。

こんな体験を幾度も重ね、ようやく手に入れたのが、JALの飛行機消しゴム。
ボーイング747と、767だ。
タラップ車や、ト−イングトラクターまで付いてセットになっているスグレモノで、嬉しくって、それから1週間顔がほころびっぱなしだった。

ひょっとすると他の航空会社でも、消しゴムを作っているのではないかと、著名なエアライン15社の東京オフィスの広報部に、かたっぱしから電話を入れたこともある。

しかし、飛行機形の消しゴムがないかなんて、先方にとっては、くだらない問い合わせだ。
ていねいに対応してもらえるはずがない。
半数以上は、機械的に返答をし、そそくさと話を終えようとするのだった。
さすがに、ヨーロッパのかなり大手の航空会社から、
(この忙しいのに、なにが消しゴムよ、フン)
というニュアンスでけんもほろろに電話を切られたときには、私もちょっぴり傷ついて、
(ここの飛行機には、もう乗りたくないなあ)
なんて弱気になってしまったけれど‥‥。

そんななかで、実に親切に付き合ってくれたエアラインが、3つあった。
KLMオランダ航空と、スイス・エアと、シンガポール・エアで、わざわざ本社にまで連絡し、確認をとってくれたのには感激した。

その結果発見されたのが、このページの鮮やかな青の飛行機。
KLMの消しゴムである。
「取り寄せてみたら、すみません、あんまりかわいくないんですよ」
と担当の方は恐縮していらしたけれど、とんでもない。
シンプルで、すがすがしい魅力あふれる作品であった。

単純計算をして、航空会社の5人に1人が、消しゴム・コレクションに好意を示してくれたことになり、ありがたいかぎりである。
世の中、消しゴム好きなど、まだまだ理解されない。
ほとんどの人の反応が、
「まあ、この人、いい歳して‥‥」
というものなのだから。

しかし、しかしだ、この秘められた世界の魔力に一度触れてしまったら、もう後戻りはできない。
あなたも覚悟して、さあ次のページへ!