さあ、それではここで問題です。
このなかで、本物のクッキーはどれでしょうか?!
どう、難しいでしょう。
大きさも、形も、色つやも、よくできていて、なかなか見分けがつかないのだから。
一時期、私はこのクッキーに凝ったことがあって、周囲にさんざん迷惑をかけた。
事務所に打ち合せにくるお客様のお茶菓子に出しては、顰蹙(ひんしゅく)を買ったのだ。
本物のクッキーのなかに、1、2枚偽物を混ぜておくのである。
私が先に手を出して、そしらぬ顔で食べていれば、まさか同じ皿のなかに消しゴムが紛れこんでいるなどと、誰も思いはしない。
不用意にひとつをつまみあげ、口に放りこんだとたん、あら大変。
皆一様に、見るも無残に顔をゆがませ、悲鳴をあげて飛び上がるのだった。
趣味の悪い悪戯であった。
あの一件で、私は多くの友人と仕事を失ったような気がする。
申し訳ない。
この場を借りて、心からお詫びしたい。
ところで、クイズの正解はというと ―― ゼロ。
本物は、ひとつもありません。
ぜーんぶ、消しゴムでした。
悪しからず。
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