まずもって私が感心したのは、ボルトとナットの消しゴムである。
もちろん、本物と全く同じに、くるくるねじって、取り外し可能。両側に溝の掘られたもの、十字など、さまざまな形のものがあり、組み合わせによって、いかようにも方向をつなげていける。
多分、子供が機械の美しさに最初に出会うっといったら、このあたりからだろう。
ちっぽけな部品を少しずつ噛み合わせていって、できあがる巨大なマシーンは、機能美に満ちていて、手にするものの心を動かさずにはいられない。
それを承知で消しゴムを作る、メーカーも、なかなかの仕掛人である。
さらには、必要な種々の工具まで、消しゴムになっていた。
かなづち、のこぎり、ペンチ……。
ネジには頭にリアルな溝まで刻んであり、専用にドライバーが付いている。
ほとんどの消しゴムに共通の、かわいいとか愉快といった形容詞はあたらない。
使いやすさにも疑問符がつく。
しかし、それらは確実に、新しい魅力の世界への道程なのである。
スパナ、モンキーレンチとくれば、もう、
「おぬし、やるな」
と、にやり笑って、目配せしてしまうほかないではないか。
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