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あたりまえのことだけれど、夏は暑い。

私は暑さが大の苦手で、この時期には、いつも元気をなくしてしまうのだが、それでも今年はひとつだけ、嬉しい出来事があった。
好物のソフトクリームが、ブームを巻きおこしたのである。

町のあちこちに、これまでは見られなかったソフトクリームののぼりが立った。
ソフトクリームを目玉のひとつに売り出した、メジャーのコンビニ・チェーンが3つもあり、女子高生らが列を作ってならんでいる。
私もちゃっかりその中にまじって、ソフトクリームをぱくつく。





かつてソフトクリームの店が激減したのは、確かヨーグルト・ソフトなる代物がもてはやされたころであった、と思う。
経営者はソフトクリームの製造機を次々ヨーグルト・ソフトに切り替えてしまったのだ。

考えてみると、ヨーグルト・ソフトなんて、変な食べ物である。
元来ヨーグルトはソフトなものなのに、日本で一般化されたとき、どういうわけか、寒天みたいに固めた格好で売り出されてしまったため、後に登場したソフトタイプが妙に新鮮に見えただけのことなのだ。

一時の流行は、当然去っていくほかなかった。
けれど、そのままソフトクリームも、店頭に戻ってこなかったのである。

しかし、あなどってはいけない。
ソフトクリームは、寿司やすき焼きと同様、日本の誇る食文化のひとつだと、私は考えている。

どの外国に出かけても、(少なくとも、私の旅したところには)ソフトクリームは存在しない。
それは、アイスクリームでもなく(もちろん溶けたアイスでも全くなく)、キャンディーでもない。
ソフトクリームは日本特有の食べ物だと、私たちは胸を張っていいのだ。

とりわけ、バニラとチョコの2種類を吹き出し口で抱き合わせにし、くねくねとひねりを入れて、ミックスにするなんて、実に日本人らしい創意工夫にあふれているではないか。

どこそこに評判のソフトクリームがあるとか、新しい店ができたなどと聞きつけると、私は出かけずにはいられなくなる。

乳脂肪分の割合、クリームの練り具合、舌先の感触、清涼感、コーンの焼き、形、パリパリ感、クリームとのマッチング……などなど、店により味わいは大きく異なり、ソフトクリームの奥は深い。

そんなソフトクリームの魅力の世界を、このページでは消しゴムで、堪能していただくとしよう。