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スーパー・マーケットの売り場に、各メーカーの洗剤が山と積まれ、どれにしようかと迷うように、洗剤の消しゴムにもさまざまなものがある。

ネーミングからして、ツワモノ揃いだ。
酸素パワーの「トップ」は「ホップ」、「ワンダフル」は「オー!ワンダフル」、「ニュー・ビーズ」は「フレッシュ・ビーズ」、「ザブ」は「ダブ」や「ザブザブ」と、たくみに名前を変えている。
「輝くような洗い上がり」というキャッチコピーだって「輝くような消しあと」になるし、「無リン」は「ゴ無リン」と記されている。

わくわくしながら箱を開けてみると、中から洗濯済みの白いシャツ(の形の消しゴム)が飛び出したりして、またびっくり。

しかし、この程度で感心してはいられない。
極めつけは、中身が本物そっくりそのままの、粉消しゴムのシリーズだ。
一瞬口あんぐり、目が点になってしまった。
ブルーダイヤなんて、金、銀、パールのプレゼントが入っていていても不思議ではないくらいだ。

使うときは、文字の上に適量をばらばらと落とし、中指(あるいは人差し指)の腹でこすりとる。
さほどの効果は望めないかもしれないけれど、ここまで徹底してもらったら文句はない、と誰もが思うはずだ。




そして、これは、こういうマニアックな消しゴムを扱う文房具屋の、心意気にも通じる気がする。

どんな消しゴムを、どういうバランスで選択し店に置くかで、店主の人柄までわかってしまうと言ったら、驚かれるだろうか。
その傾向は、ノートやボールペンといったものより、ずっとはっきりと消しゴムに表れる。

粉消しの洗剤なんて揃えている店主は、そうとう物わかりのよい、遊び心のある粋人(でなければ変人――これ誉め言葉です、念のため)であろう。

概して、町の中心に位置する大きな文具店では、ごくあたりまえの消しゴムしか手に入らないことが多い。
合理性や利潤を優先するあまり、店主の個性が失われてしまっているようで、つまらない。

愛情こめて選ばれてきたユニークな消しゴムは、むしろ横丁の小さな文具屋に、宝物のように眠っている。
また地方に出かけたとき、今にもつぶれそうな古びた雑貨屋で、埃をかぶった棚の奥に、思わぬ掘り出し物を発見することもある。

売れるあてもなく、たいした儲けになるはずもないが、それでも「どうだい、こんな面白いものを仕入れてきたよ」と胸をはる主人の顔が、誇らしげだ。

そんな店主の笑みと、何年前だかわからないが、その消しゴムを発想し、作りあげた見知らぬ人の満足げな顔が、折り重なって見えてくる。

さらに、悪戯っ子のネットワークができあがっていくように、自分もきっとその消しゴムを手の平に乗せ、同じように嬉しそうな顔をしているんだろうなと思うと、私はいつも愉快な気分になる。