** Eriko Kusuta's World ** 楠田枝里子公式ホームページ **
■ はじめに

■ Airplane
■ Animal
■ Ball Game
■ Barbell
■ Bomb
■ Book
■ Box Lunch
■ Bread, Roll
■ Button
■ Cake
■ Camera
■ Candy
■ Canned Beverage
■ Car
■ Caramel
■ Card
■ Cassette Tape
■ Cellulose Tape
■ Chewing Gum
■ Chinese Noodles
■ Chocolate
■ Cigarette
■ Clapperboard
■ Clock
■ Clothespin
■ Coffee and Cream
■ Comb
■ Cookie
■ Crayon
■ Curry and Rice
■ Cutlet
■ Detergent
■ Dinosaur
■ Doll House
■ Donburi
■ Fire Extinguisher
■ Fish
■ Flower
■ Fruit
■ Hamburger
■ House
■ Human Body
■ Ice Cream
■ Ice Lolly
■ Kamaboko
■ Kitchenware
■ Light Bulb
■ Medical Supplies
■ Milk
■ Money
■ Monster
■ Mosquito Coil
■ Musical Note
■ National Flag
■ Noodles
■ Notebook
■ Nuts
■ Oden
■ Peko-chan
■ Pencil
■ Picnic Lunch
■ Prism
■ Raisins and Butter
■ Record
■ Ruler
■ Sauce
■ Shirt
■ Shoes
■ Soft Ice Cream
■ Space Shuttle
■ Stamp
■ Sushi
■ Taiyaki
■ Tap
■ Tea Bag
■ Telephone
■ Testimonial
■ Tissues
■ Tofu
■ Tool
■ Toy
■ Unaju
■ Vacuum Cleaner
■ Vegetables
■ Video Game
■ Wrap

世界の消しゴム
■ America(USA)
■ Australia
■ Chile
■ China
■ Colombia
■ Denmark
■ England(U.K.)
■ France
■ Germany
■ Indonesia
■ Islael
■ Italy
■ Mexico
■ New Zealand
■ Peru
■ Poland
■ Soviet Union
■ Spain
■ Taiwan



Copyrights



「消しゴム図鑑」を作るにあたって、最初の難関は、ざっと二万点ものコレクションを整理、分類し、夥しい項目のなかから、今回取り上げる消しゴムをピックアップすることだった。

ページには限りがあるから、全てを紹介できるわけはない。
泣く泣くあきらめねばならなかった秀作が多々ある。
私自身、身を切られる思いで、ついには熱を出してしまうほどだった。

項目の立てかたにも苦労した。
たとえば、はじめのうちは、「イヌ」「ネコ」というふうに独立したページを作るつもりでいたものが、それではとても納まりきれず、それぞれの数を最小限にしぼって、まとめて「動物」とせざるをえなかった。

このページも「ひまわり」「チューリップ」と分けられず、「花」となった。
「花かご」も「じょうろ」も「バケツとスコップ」も、花関連としてこの中に組みこまねばならなかった。

ところが、やむなくこの作業を続けているうち、ちょっと奇妙なことに気付いたのである。




まず、写真右のバケツを見ていただきたい。
黄、青、赤と、明るい色彩のポリバケツに、金色の持ち手が付いている。
中には色をそろえたスコップが入っているのだが、これは取り外し可能で、かつバケツに差し込むさいにはどんな角度でも安定するよう、内側の構造にも工夫がこらしてある。
シンプルだが、知恵をしぼってある。
なかなかの作品なのである。

だが、それに比べて、花自体の作りはどうだろう。
どれも、いわゆる金太郎飴式の、ゴムのかたまりをカットしただけの、最も単純な製法となっている。
実際に目にする花々の多様性を考えると、あまりにもワンパターンではないか‥‥。

と、ここまできて、私は、思わぬ消しゴム世界の奥深さに、膝を打った。

たかだか人間の作り出したものなら、どこまででも、消しゴムは本物に迫ることができる。
バケツだって、ラーメンだって、セロハンテープだって‥‥。
しかし、神の創造物である花――自然には到底太刀打ちできないことを、消しゴムは知っている。
そこはいわば聖域なのである。なぜなら、消しゴムを構成している物質、元素のひとつひとつが、神の創造物に他ならないからだ。
そして、この150億年の宇宙の歴史のなかでは、まばたきするほんの一瞬さえも、自分たちは存在できないことを、認識しているからだ。
という気がする。

消しゴムは、十分身の程をわきまえている。
そうして、ほんの申し訳程度に自然を模倣してみせては、「こんなものなんです、私たち」と、照れ笑いをしているのではないだろうか。