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小学校にあがったころから、私は文字を書くのが好きだった。
まとまりのある文章ではなく、ひらめくままに文字(ほとんど、ひらがな)だけで、ひたすらノートを埋めていた。

授業中、楽しそうに鉛筆を動かす私を見て、なかなかマジメな生徒だと、誰もが感心したにちがいない。
が、私は勉強など大嫌いで、ただ時間をつぶしていただけのことだ。
紙面がいっぱいになれば、消しゴムであっさり消して、また書き始めるのだった。

おそらく私は、記号としての文字の面白さに夢中になっていたのだろう。
とりあえず「え」と書き、続いて「る」「か」「み」「の」……と、でたらめに字を置いていく。

すると、どうだろう。
なんの企みもあったわけではないのに、ふと気付くと、たまたま「あ」の隣に「き」がいあわせて、紅葉の季節が出現する。
「ゆ」がくっつくと、魚が泳ぎだし、「ほ」がくれば、こそっと笑ってしまう。
てんでばらばらに記された文字群のなかに、いくつもの世界が浮かびあがってくるではないか。

それを消しゴムで削っていくときにも、偶然に取り残された文字の連なりに、またもや、予想もしなかった別の宇宙が生まれでては、消えていくのだった。






こんな幼い私の楽しみを、そのまま形にしたように思えるのが、鉛筆の消しゴムである。

厚さ3.5センチ、長さ20センチ以上の特大消しゴムは、どっしりと重い。

使うにつれて、するすると、シンの回りに巻きついていた紙がほどけていく、おみくじ消しゴムは、どんな運勢が示されるか、興味津々である。
大吉が出れば、
「方向東の方角でよいことがあります。
試験合格まであと一歩です。
がんばりましょう。」
中吉だと、
「学問安心して勉強してください。
旅行ちょっと雨がふりますが、でも楽しい旅になるでしょう。」
といった具合に、受験生へのやさしい心遣いも忘れていない。

そして、何といっても極め付きは、鉛筆のシンは本物で、その周囲(通常木でできた部分)は消しゴムで作られているという代物だろう(写真左)。
懸命に書けば書くほど自動的に、字は片っ端から消されていく。

そこにあふれているのは、生成と破壊が同時進行していることの皮肉……いや、あくまでも自己完結する潔さというべきだろうか。