幼い頃、最初に与えられた、世界を描き出すための道具が、クレヨンだった。
私は大喜びで、毎日毎日、山のような画用紙を色で埋めた。
そのうち6色セットでは、あきたりなくなる。
「もっとたくさん、色がほしいなあ」
両親にねだりにねだり、ようやく、12色セットのクレヨンを買ってもらった。
新品のクレヨン箱は、まぶしいほどで、あまりの嬉しさに、夜は枕元に置いて寝た記憶がある。
やがて、今度は、24色がほしくなって‥‥。
小さな私の心わかせた時間を、このクレヨンの消しゴムが甦らせてくれる。
紙テープの先に頭を丸くのぞかせた鮮やかな色彩の肌は、あの日と同じに、ぴかぴか光っている。
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