** Eriko Kusuta's World ** 楠田枝里子公式ホームページ **
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永遠のマフィンへ
楠田枝里子
ちょうど１年前の、８月１１日。
朝６時３０分に、マフィンは虹の橋へと、旅立ちました。
私は夜じゅう、ベッドの上で、マフィンを抱きかかえるように、横になっていました。
ありったけの力を振り絞って、とうに動かなくなっていた前足を私の前に出し、モミモミをしてくれたマフィンの姿が、今も鮮やかに浮かび上がります。
１６歳を過ぎるまで、毎朝３０分、私の左の二の腕で、ちゅぱちゅぱモミモミをしていた、甘えん坊のマフィンらしい、私への最後のプレゼントでした。
それから、３回大きく息をして、マフィンは眠りにつきました。
モミモミをしていた最中から、マフィンは両目を大きくまん丸に開いて、私を見つめていました。
赤ちゃんの頃と同じ、たまらなく、かわいらしいお顔でした。
私は、マフィンに、何か優しい言葉をかけてあげたかった・・・。
それなのに、私の心臓も、のども押しつぶされてしまったように、息も声も出せませんでした。
人は、絶望の淵に立たされた時、こんなふうに何も言えなくなってしまうものなのか・・・。
自分の不甲斐なさが、悔やまれてなりませんでした。
世界が凍り付いてしまったかのように、感じられました。
マフィンは、最後の最後まで、まっすぐに私を見つめていました。
私たちはずっと、ただ見つめあっていたのでした。
今でも、夜ベッドに入るとき、あのときのマフィンの姿が頭をよぎります。
この１年、マフィンを想って、涙しない日は、ありませんでした。
不甲斐ないママを心配してか、賢いマフィンはきちんと、お友だちに報告に行ったようです。
日本一のご長寿ソマリだった、あらし君のマッキー・パパとりかちゃんママのところには、翌日２羽の黒アゲハになって挨拶に行ったと、聞きました。
「マフィンちゃんが迷わないように、ボクがこれから虹の橋のたもとまで、案内してあげるんだ」
と、先輩のあらし君は、ふたりに、マフィンを紹介したそうです。
ほどなく、秩父の森の中にいたマッキーさんとりかちゃんの前に、一瞬、見事な虹が浮かび上がりました。
古いお友だちのみゆきちゃんの前にも、散歩途中に、驚くほど鮮やかな大きな虹が現れたと、写真を送ってもらいました。
一番長いお付き合いで、マフィンの第二の母だった、ラムネちゃんのところには、連絡はなかったようです。
マフィンは、知っていたのですね。
ラムネちゃんのおうちには、アルちゃん、マリンちゃんという仲よしがいて、きっと自分の遺品を、私がプレゼントするであろうことを。
そして、自分はこれからも、ラムネちゃんのおうちに、遊びに行くだろうことも。
私の夢のなかにも、ずっとマフィンは出てきてくれませんでした。
たった一度だけ、１９歳のお誕生日の少し前、朝方に、マフィンが私の左の二の腕でモミモミをしてくれた気がして、はっと目を覚ましました。
マフィンは言っていたのでしょう。
「いつまで、メソメソしてるの？！
夢で会わなくたって、ボク、今もしょっちゅう、ママのそばにいるじゃない！」
って。
２０２１年８月
マフィンへのお手紙は、こちらへ
マフィンのポスト・カードはこちら
ママ、おぼえてる？
ボク、ちっちゃいときから、
右の前足の上に左足を乗っけるのが、
好きだった。
大きくなっても、ずうっとね。
「マーちゃん、また足組んでるね」
って、ママはよく笑ってた。
こうしていると、落ち着くんだもん。
ほら、ママ、また笑ってよ。
ボクはママのすぐそばで、
今日も足組んでるよ！
