マフィンと出会った日
楠田枝里子
5月は、マフィンと出会った、思い出の月です。
20年前、ゲストで出演したテレビ番組の中で、猫好きの私のために、サプライズで、子猫が2匹登場しました。
ソマリと、ノルウェージャンフォレストキャットという、私が当時から大好きだった猫種です。
マフィンちゃんは、そのソマリで、生まれてまだ1ヵ月になっていないチビちゃんでした。
突然、眩しくライトの当たるスタジオに連れてこられたら、人間だって緊張してしまいますよね。
ましてや、動物たちは、パニックを起こして走り暴れるか、固まって動けなくなるのが、ほとんどです。
けれど、マフィンは、違いました。
周囲をぐるりと眺め渡し、スタジオ出演者の間を、堂々と歩き回りました。
そして、最後に私の前に立ち止まり、大きな青い目で、クッと私を見つめたのです。
「ここに決めた!」
と言っているようでした。
思わず抱え上げて膝に乗っけると、そのままそこで、番組が終わるまで、ぐっすりと眠り続けました。
なんという大物!!
私は、マフィンに、選ばれてしまったのですね。
マフィンが亡くなったあと、彼の記録を残していたボックスを開いて、整理していましたら、ひらりと、1枚のポラロイド写真が出てきました。
あの日、番組収録が終わって、着替えをすませた私が、スタジオ脇の準備室に、マフィンちゃんにもう一度会いに行ったとき、その場にいた誰かが、私たちの写真を撮ってくださったのですね。
長い時間を経た写真は、すっかり色褪せていますが、初めて会ったときの、胸が苦しくなるほどの甘い感情が、甦ります。
2022年5月
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