マフィンからのクリスマス・プレゼント
楠田枝里子
とても、とても、不思議な話です。
1年経った今でも、あれは本当に現実だったのだろうかと、信じられない気持ちです。
少し長いのですが、読んでください。
去年11月から、私はずっと、ロイヤルコペンハーゲンが2011年に発表したクリスマスツリーを探していました。
眠っている猫があしらわれたツリーらしいというところに、魅かれました。
ロイヤルコペンハーゲンを扱っている店やサイトをあちこち当たりましたが、10年も前のもので、なかなか見つかりません。
12月の初めになって、私はついにパリの友人に連絡を入れ、ヨーロッパで探してみてほしいと、頼みました。
日本で、目的のものは見つかりませんでしたが、途中ひとつ、ちょっと気に掛かったツリーがありました。
緑のなかにたくさんの白いリボンが結ばれていて、足元には、たくさんのプレゼントの箱。
クリスマスツリーに付きものの、動物も人形もロウソクも、ひとつも見当たりません。
ただ、リボンと箱だらけ。
それが、気に入りました。
私ではなく・・・愛猫マフィンのために。
猫はリボンや紐で大喜びで遊びます。
箱を見れば、すぐ中に飛び込んで、嬉しそうにしています。
マフィンは8月に亡くなってはいましたが、そのツリーを、マフィンへのクリスマス・プレゼントにしようと、私は思ったのですね。
注文したそのツリーが届いたのは、12月15日(火)でした。
その日の夜、私はマフィンの(遺骨の)前に、ツリーを飾り、ちょっと早いけど、クリスマス・プレゼントだと、伝えました。
私がほしくて探している2011年のツリーはまだ見つからない、とも報告しました。
翌日16日の午後、パリの友人から、探し物は見つからなかった、と連絡が入り、マフィンにもすぐ、残念だけど諦めなくちゃね、と話をしました。
そして翌日17日の午後、不思議な流れとなります。
仕事をするため、PCに向かった私は、訳もなく、今まで触れたことのなかったオークションサイトをクリックしていたのです。
(オークションサイトになど、今まで全く興味がなく、生まれて初めての経験でした。)
「探しものは?」
と尋ねる画面が出たので、他に何も思いつかなかった私は、
「ロイヤルコペンハーゲン クリスマスツリー」
と打ち込んでいました。
夥しい数のツリーの画像が、たちまち映し出されました。
目を疑いました。
そのなかに・・・2011年のそれが1点、あったのです!!!
八方手を尽くして、見つからなかったものだったのに・・・。
しかもそれは、驚くことに、前日16日の夜から、たった2日間のみの限定で、出品されたものでした。
まるで、私のために、そのタイミングでサイトに登場したかのように・・・。
すぐに購入のボタンを押し、ツリーを落札しました。
ほどなく、出品者から、落札のお知らせとお礼のメールが届きました。
サイトでは「匿名」の表示が出ていたのですが、その人は丁寧な文章とともに、名前を記してくれていました。
その人の名は、「えり子」さんでした!
(私はネットで買い物をするときは、仮名を使っているので、先方に「楠田枝里子」であることは、全く知らされていません。)
そのツリーは、がっかりしている私のために、マフィンが引き合わせてくれたもののように、私には感じられました。
さらに奇妙なことには、サイトの通信欄に「えり子」さんの名が表示されたのは、その1回きりで、翌日にはもう出品者の名は削除されていました。
あれは、夢だったのでしょうか?
ツリーは、クリスマス・イブに間に合って、手元に届きました。
宅配の伝票に確かに記された出品者の「えり子」さんの名前をまじまじと見て、私は、ひょっとすると、えり子さんは、マフィンだったのかもしれないと、思いました。
星降るなかに、猫が1匹、横になって、眠っていました。
にっこりと微笑み、幸せそうに眠っています。
その姿をつくづくと見つめていて、私は、あっと声を上げました。
眠っている、そのコは、左の前足を右前足にちょっぴり乗っけていて・・・。
息が止まりそうになりました。
そのコは、マフィンちゃんだったのです!
彼は、これを見せたかったのですね。
私が毎日、泣きながら骨箱を撫で、話しかけるのを聞いていて、自分の姿を見せてあげようと、思ってくれたのですね。
「ほら、ボクは今、こんなに気持ちよく眠っているよ」
って。
それは、マフィンから私への、クリスマス・プレゼントだったのです。
イブの夜、マフィンの祭壇に、私からマフィンに贈ったツリーと、マフィンが私にプレゼントしてくれたツリーをふたつ並べ、ふたりでケーキを食べました。
2021年12月
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